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助成研究

TES-TIを​用いた​パワーナップに​よる​睡眠回復の​向上

TES-TIを​用いた​パワーナップに​よる​睡眠回復の​向上

Neuroscience
Cover Tononi Website
新たな​プロジェクトでは、​時間干渉を​用いた​経頭蓋電気刺激​(TES-TI)を​活用し、​睡眠の​徐波​(スローウェーブ)を​増強する​ことで、​仮眠の​回復力を​高めます。​十分に​回復できない​睡眠傾向を​持つ健康な​人の​精神的疲労に​対し、​改善を​目指します。
Giulio Tononi 教授(MD, PhD)
Gtononi
精神医学教授​(ウィスコンシン大学マディソン校)
Giulio Tononi 教授は、​ウィスコンシン大学マディソン校を​拠点と​する​神経科学者で​あり精神科医で、​睡眠医学および​意識科学の​チェアを​務めています。​意識に​関する​研究では、​意識とは​何か、​その​神経基盤、​量と​質を​規定する​要因、​そして​測定方​法までを​包括的に​説明する​統合情報理論​(Integrated Information Theory)の​発展を​中心に​取り​組んできました。​この​理論は、​特定の​脳領域が​意識に​とって​重要である​理由を​説明し、​健常者および​反応の​ない​患者に​おいても​意識の​量を​評価する​ための​実用的な​指標の​開発に​つながっています。​睡眠に​関する​研究では、​睡眠の​中核的機能を​包括的に​説明する​シナプス恒常性仮説​(Synaptic Homeostasis Hypothesis)を​提唱し、​多くの​実証的エビデンスに​より​支持されています。
要旨
本プロジェクトは、時間干渉を用いた経頭蓋電気刺激(TES-TI)により睡眠の徐波(スローウェーブ)産生を高め、睡眠の回復力を強化することで、認知機能低下(精神的疲労)と、その根底にある要因(脳疲労)に対処することを目指します。TES-TIは、複数の高周波電場(2,000Hz超)間の時間干渉を基盤とする新しい経頭蓋電気刺激手法であり、電場を制御することで脳深部を含む広い深さにわたり最大限の効果を狙うことができます。私たちは、睡眠の徐波の多くが伝播する脳深部領域にTES-TIを標的化し、これまで私たちのグループが示してきた知見に基づき、脳回路に対する睡眠の回復機能をより強く引き出します。対象は、主観的に「回復感が得られない」睡眠を抱える健康な参加者とし、TES-TIによるパワーナップが、偽刺激(シャム)による仮眠に比べて、徐波の産生と回復的な睡眠の促進においてより高い効果を示すことを期待します。本研究は、夜間全体へのTES-TI適用(パワースリープ)へと展開するための基盤となり、最終的には一般の方々に向けた、携帯可能でスケーラブルなパワースリープ・デバイスの開発を目指します。
背景
精神的疲労や回復感の得られない睡眠は、注意力や学習能力、そして全体的なウェルビーイングを損ないます。NREM睡眠中に出現する睡眠の徐波(スローウェーブ)は、シナプスのダウンセレクション、記憶の固定化、細胞レベルの回復を促進しますが、多くの人が仮眠をとっても回復感が得られないと感じています。
アプローチ
自己申告で回復感の得られない睡眠を有する成人を対象に、90分間の午後の仮眠中、低周波エンベロープを生み出すよう制御された高周波電場が干渉するTES-TIを、脳深部(例:島皮質)に適用します。脳幹の覚醒系を回避することで、被験者を覚醒させることなく、徐波を選択的に増幅します。
方​法論
図1
TES-TIの原理。
Fig 1 Sides
Fig 1 Sides
ES-TIと​その​利点
TES-TIは、kHz帯でわずかに異なる周波数の複数の電場を脳へ与えることを基盤としています(図1)。TES-TIでは、頭部上の2組(またはそれ以上)の電極ペアが、それぞれ高周波の交流電流(f1およびf2)を印加し、通常その周波数は約2〜5kHzです。これらの周波数は高く、それ自体では神経メカニズムに影響を与えません。しかし、周波数がわずかに異なる場合(例:f1=2000Hz、f2=2001Hz)、誘導される電場の重ね合わせにより、低周波の差分(Δf=1Hz)で振動するエンベロープが生じ、これが神経活動に影響を与え得ます。エンベロープの最大振幅は、電極配置と刺激チャネル間の電流強度比を最適化することで、狙った領域へ「ステアリング」できます。この方法により、深部を含む特定の脳領域に神経調節を選択的に標的化しつつ、近接領域や表層領域での副次的影響を最小化することが可能です。 TES-TIによる神経活動および可塑性の調節効果は、げっ歯類や霊長類モデルに加え、ヒトにおける複数の臨床応用でも検証されています。したがってTES-TIは、海馬などの深部領域を、表層の皮質ニューロンを活性化させることなく選択的に活性化でき、さらに電極を物理的に動かすことなく他の脳領域へも標的を切り替えることができます。fMRIおよび行動実験では、TES-TIが海馬活動を局所的に調節し、健常者におけるエピソード記憶の正確性を高めることが示されています。また、線条体を標的としたシータ・バースト様パターンのTES-TIは、線条体および関連する運動ネットワークの活動を増加させ、運動学習能力を向上させることが示されています。
図2
多極時間干渉(mTI)の模式図。 上:複数のキャリア周波数間のmTIにより、大きな差分エンベロープが生成され、振幅を低減することで焦点性を高めることができます。下:標準TIとmTIで生成される電場のシミュレーション結果の比較(提供:Adam Williamson[マルセイユ])。
Fig 2 Sides
Fig 2 Sides
多極時間干渉​(mTI)​
これまでの多くの研究では、TES-TIに2つの高周波チャネルが用いられてきましたが、現在では複数のチャネル(現時点では最大8チャネル)を組み合わせることで、各チャネルの電流を低減しつつ、刺激の焦点性をさらに高めることが可能になっています。当研究グループの最先端TIソリューション・デバイスは8チャネルを備え、対応するプランニングソフトウェアを搭載しています。mTIの原理を示す模式図と、焦点性の向上を示す一例を以下に示します(図2、提供:Adam Williamson)。
個別化TES-TI
介入の個別化と脳領域の精密な標的化は、有効な治療に不可欠な要素としてますます重視されています。従来のTESと比べたTES-TIの大きな利点は、TI エンベロープを、任意の深さで、精密に集束できる能力にあります。これにより、刺激レジームを完全に個別化することが可能になります。TI-solutionsのソフトウェアでは、被験者個人のMRIを読み込み、各人の解剖学的特徴に基づいて刺激パラメータをさらに精緻化できます。加えて、他の財源による資金確保が可能であれば、対象者にMRI撮像を実施し、刺激パラメータを個別化することで、より高い精度を実現します。
Hero Hands
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