Project EDITOME:生成AIによる精密マイクロバイオーム・エンジニアリング
Project EDITOME:生成AIによる精密マイクロバイオーム・エンジニアリング
地球上のあらゆる場所で、微生物をその場で直接リプログラムできる未来を想像してみてください。EDITOMEが目指すのは、腸内や皮膚、土壌など、微生物が本来生息する環境の中で、その遺伝子を直接編集することです。これにより、微生物を環境から分離し、培養した後、再び元の環境に戻すという、時間がかかり、エラーも生じやすい従来のプロセスを省くことが可能になります。
著者について
要旨
Project EDITOME(Engineering from Data-driven Insights for Targeted Optimization of Microbiome Editing)は、複雑な自然環境に存在する微生物の遺伝子を、その場で直接編集するという革新的な遺伝子工学アプローチの確立を目指すプロジェクトです。
従来のマイクロバイオームへの介入では、抗生物質やプロバイオティクスのように、微生物群集に広く作用する手法が中心でした。一方EDITOMEでは、遺伝子レベルで精密に作用することで、これまで実現できなかった高い精度と制御性を目指します。
本プロジェクトでは、独自の大規模言語モデル(LLM)を活用してDNAエレメントを設計し、微生物の挙動を迅速かつ予測可能な形で変化させることで、従来は遺伝子操作が困難、あるいは不可能だった微生物種を含め、その増殖や機能をこれまでにない高い精度で制御できる可能性があります。この技術が取り組むのは、マイクロバイオーム工学における中心的なボトルネックです。すなわち、多種多様な微生物が密集する生態系の中で、特定の標的微生物に遺伝子編集ツールを正確に届け、さらにそのツールを確実に機能させることです。
最終的には、マイクロバイオーム研究を単なる「相関」の解明から真の「因果関係」の解明へと発展させ、ヒトの健康、農業、産業の持続可能性など幅広い分野において、スケーラブルかつプログラム可能な介入の実現につながると期待されます。
従来のマイクロバイオームへの介入では、抗生物質やプロバイオティクスのように、微生物群集に広く作用する手法が中心でした。一方EDITOMEでは、遺伝子レベルで精密に作用することで、これまで実現できなかった高い精度と制御性を目指します。
本プロジェクトでは、独自の大規模言語モデル(LLM)を活用してDNAエレメントを設計し、微生物の挙動を迅速かつ予測可能な形で変化させることで、従来は遺伝子操作が困難、あるいは不可能だった微生物種を含め、その増殖や機能をこれまでにない高い精度で制御できる可能性があります。この技術が取り組むのは、マイクロバイオーム工学における中心的なボトルネックです。すなわち、多種多様な微生物が密集する生態系の中で、特定の標的微生物に遺伝子編集ツールを正確に届け、さらにそのツールを確実に機能させることです。
最終的には、マイクロバイオーム研究を単なる「相関」の解明から真の「因果関係」の解明へと発展させ、ヒトの健康、農業、産業の持続可能性など幅広い分野において、スケーラブルかつプログラム可能な介入の実現につながると期待されます。
背景
微生物群集を改変する従来の手法には、根本的な課題があります。微生物が単独で分離された状態では、本来の微生物群集内に存在するときとは異なる挙動を示す場合が多いことです。
多くの従来手法では、個々の菌株を分離して研究室で培養し、遺伝子編集を行った後、元の生態系へ戻すというプロセスが必要です。しかし、この一連のプロセスには時間がかかり、エラーも生じやすいうえ、遺伝子編集した微生物を元の環境に戻しても、生存できなかったり、期待どおりに機能しなかったりすることも少なくありません。また、抗生物質やプロバイオティクスをはじめとする医療・農業分野の多くの介入は、特定の微生物を精密に改変するのではなく、微生物群集全体に広く作用します。
現在の合成生物学における根本的なボトルネックは、複雑かつ高密度な生体システムの中で、標的とする微生物に遺伝子編集ツールを正確に届け、それを確実に機能させることが難しい点にあります。
多くの従来手法では、個々の菌株を分離して研究室で培養し、遺伝子編集を行った後、元の生態系へ戻すというプロセスが必要です。しかし、この一連のプロセスには時間がかかり、エラーも生じやすいうえ、遺伝子編集した微生物を元の環境に戻しても、生存できなかったり、期待どおりに機能しなかったりすることも少なくありません。また、抗生物質やプロバイオティクスをはじめとする医療・農業分野の多くの介入は、特定の微生物を精密に改変するのではなく、微生物群集全体に広く作用します。
現在の合成生物学における根本的なボトルネックは、複雑かつ高密度な生体システムの中で、標的とする微生物に遺伝子編集ツールを正確に届け、それを確実に機能させることが難しい点にあります。
アプローチ
EDITOMEでは、AIを活用した「Design-Build-Test-Learn(設計・構築・検証・学習)」サイクルを導入します。このサイクルでは、計算モデルによって遺伝子編集ツールを設計し、実験室でその性能を検証し、得られた結果を次の設計にフィードバックすることで、継続的に性能を向上させます。
プラスミド設計のための生成LLM:
手作業による試行錯誤に代わり、あらゆる標的生物に合わせてカスタマイズされた完全なプラスミド編集システムを生成することを最終目標として、LLMの開発を進めています。現在はその基盤となるステップとして、特定の細菌内でプラスミドを維持し機能させるために不可欠な遺伝要素である「適合性のあるレプリコン」のDNA配列設計に重点を置いています。
ET-Seq、DART、Bridge Recombinase技術:
IGIが開発してきた基盤技術を活用します。Environmental Transformation Sequencing(ET-Seq)は、複雑な微生物群集の中から遺伝子操作が可能な微生物を特定する技術です。さらに、DNA-editing All-in-one RNA-guided CRISPR-Cas Transposase(DART)に加え、近年では標的部位へのDNA挿入を可能にするBridge Recombinaseなどの技術も活用しています。これらの技術を組み合わせることで、個々の微生物種を分離することなく、複雑な微生物群集内で直接遺伝子編集を行い、その改変を検証することができます。
反復学習:
実験室で得られた結果をAIモデルにフィードバックすることで、モデルが継続的に改善される仕組みを構築します。これにより、これまで遺伝子操作が困難だった細菌に対する編集成功率を高めていくことができます。
プラスミド設計のための生成LLM:
手作業による試行錯誤に代わり、あらゆる標的生物に合わせてカスタマイズされた完全なプラスミド編集システムを生成することを最終目標として、LLMの開発を進めています。現在はその基盤となるステップとして、特定の細菌内でプラスミドを維持し機能させるために不可欠な遺伝要素である「適合性のあるレプリコン」のDNA配列設計に重点を置いています。
ET-Seq、DART、Bridge Recombinase技術:
IGIが開発してきた基盤技術を活用します。Environmental Transformation Sequencing(ET-Seq)は、複雑な微生物群集の中から遺伝子操作が可能な微生物を特定する技術です。さらに、DNA-editing All-in-one RNA-guided CRISPR-Cas Transposase(DART)に加え、近年では標的部位へのDNA挿入を可能にするBridge Recombinaseなどの技術も活用しています。これらの技術を組み合わせることで、個々の微生物種を分離することなく、複雑な微生物群集内で直接遺伝子編集を行い、その改変を検証することができます。
反復学習:
実験室で得られた結果をAIモデルにフィードバックすることで、モデルが継続的に改善される仕組みを構築します。これにより、これまで遺伝子操作が困難だった細菌に対する編集成功率を高めていくことができます。
研究方法
EDITOMEでは、生成AIと高度なCRISPRベースの微生物群集編集技術を統合した、ハイスループットな「Design-Build-Test-Learn (設計・構築・検証・学習)」サイクルを採用しています。この手法では、従来の試行錯誤に頼るアプローチから脱却し、特定の微生物内で編集ツールを機能させるために必要な遺伝要素を予測します。
AIによるツール設計
本プロジェクトの基盤となるのは、PLSDBやIMG/PRなどの大規模なゲノム・プラスミドデータベースを用いて学習させた生成型大規模言語モデル(LLM)です。
現在の焦点:
最終的なビジョンは、プラスミドをエンド・ツー・エンドで生成することですが、現時点では、標的とする細菌内でDNAプラスミドを維持し、機能させるための「適合性のあるレプリコン」の設計に重点を置いています。レプリコンには、複製起点やRepタンパク質に関わる要素など、プラスミドが細菌内で維持・機能するために重要な遺伝要素が含まれます。
精密エンジニアリング:
汎用的なツールを用いるのではなく、既存の手法では遺伝子操作が難しい非モデル微生物について、それぞれの細胞内の仕組みに合わせて最適化されたカスタムDNA配列をAIによって設計します。
現在の焦点:
最終的なビジョンは、プラスミドをエンド・ツー・エンドで生成することですが、現時点では、標的とする細菌内でDNAプラスミドを維持し、機能させるための「適合性のあるレプリコン」の設計に重点を置いています。レプリコンには、複製起点やRepタンパク質に関わる要素など、プラスミドが細菌内で維持・機能するために重要な遺伝要素が含まれます。
精密エンジニアリング:
汎用的なツールを用いるのではなく、既存の手法では遺伝子操作が難しい非モデル微生物について、それぞれの細胞内の仕組みに合わせて最適化されたカスタムDNA配列をAIによって設計します。
応用分野
短期的には、技術的リスクが最も低い産業用微生物システムに重点を置いています。この段階では、発酵、酵素生産、バイオベース化学品などの製造プロセスで、すでに利用されている微生物株の最適化を目指します。こうした既存の産業用菌株の収率、安定性、効率をピンポイントで改善することで、大規模かつコストのかかる菌株の再開発を行うことなく、制御されたin vitroおよびex vivoシステムを用いて、12~18カ月以内に実用的な価値を生み出せる可能性があります。
中期的には、より広範な生態学的課題への応用を目指し、農業や気候変動に関わる環境の持続可能性の領域へとプラットフォームを展開することを想定しています。この段階では、in situ(微生物が存在する環境内)での編集を用いて、土壌や植物に関連するマイクロバイオームを直接改変し、作物の収量、栄養利用効率、環境ストレスへの耐性を向上させることを目指します。同様のアプローチは、メタン排出量の削減を目的とした家畜のマイクロバイオームや、バイオ燃料生産に関わる微生物群集にも応用できる可能性があります。これらの応用検証には18~24カ月程度を想定しており、外部の医薬品開発業務受託機関(CRO)の支援を受けながら、動物、圃場、土壌を対象とする試験を実施します。
ヒトの健康と局所治療は、EDITOMEが特に大きなインパクトをもたらし得る応用分野の一つです。この分野では、すでに実験モデルを用いた研究が進められています。 EDITOMEを活用することで、炎症性腸疾患(IBD)や喘息など、これまでヒトの健康や疾患との「相関」しか示されていなかった微生物遺伝子について、その因果的な役割を検証することができます。これらの遺伝子を直接編集し、その影響を観察することで、マイクロバイオーム研究を単なる「関連性」の発見から、その背景にある「メカニズム」の解明へと発展させるとともに、制御された実験モデルにおける治療候補の初期実証にもつなげることができます。
本格的な臨床応用はより長期的な目標となります。初期段階では、比較的アクセスしやすく、編集ツールを届けやすい皮膚や口腔などへの応用から検討を進め、その後、より長期的なタイムラインで生体内における広範な検証を行うことが想定されています。
中期的には、より広範な生態学的課題への応用を目指し、農業や気候変動に関わる環境の持続可能性の領域へとプラットフォームを展開することを想定しています。この段階では、in situ(微生物が存在する環境内)での編集を用いて、土壌や植物に関連するマイクロバイオームを直接改変し、作物の収量、栄養利用効率、環境ストレスへの耐性を向上させることを目指します。同様のアプローチは、メタン排出量の削減を目的とした家畜のマイクロバイオームや、バイオ燃料生産に関わる微生物群集にも応用できる可能性があります。これらの応用検証には18~24カ月程度を想定しており、外部の医薬品開発業務受託機関(CRO)の支援を受けながら、動物、圃場、土壌を対象とする試験を実施します。
ヒトの健康と局所治療は、EDITOMEが特に大きなインパクトをもたらし得る応用分野の一つです。この分野では、すでに実験モデルを用いた研究が進められています。 EDITOMEを活用することで、炎症性腸疾患(IBD)や喘息など、これまでヒトの健康や疾患との「相関」しか示されていなかった微生物遺伝子について、その因果的な役割を検証することができます。これらの遺伝子を直接編集し、その影響を観察することで、マイクロバイオーム研究を単なる「関連性」の発見から、その背景にある「メカニズム」の解明へと発展させるとともに、制御された実験モデルにおける治療候補の初期実証にもつなげることができます。
本格的な臨床応用はより長期的な目標となります。初期段階では、比較的アクセスしやすく、編集ツールを届けやすい皮膚や口腔などへの応用から検討を進め、その後、より長期的なタイムラインで生体内における広範な検証を行うことが想定されています。
